定期検診・予防処置

未来のお口の健康を守るために
スタッフの情報共有

当院では、患者様に継続的できめ細やかなケアを提供するために、情報共有の仕組みに独自の工夫を凝らしております。
その中心となるのが、通常のカルテとは別に作成している「スタッフカルテ」という記録ノートです。ここには、担当した歯科医師や歯科衛生士が、その日の患者様の口腔内の状態、クリーニングの状況、お話しされたこと、ちょっとした変化や気づいたことなどを記載します。
このスタッフカルテを見ることで、どのスタッフが担当になっても、患者様のこれまでの状態や治療の経過、注意すべき点などを一目で把握することができます。また、少しでも「いつもと違うな」「注意が必要かもしれない」と感じた場合は、すぐにその情報をスタッフカルテに記録し、歯科医師に報告します。これにより、万が一、歯周病の再発や進行の兆候が見られた場合でも、早期に発見し、速やかに精密検査や必要な処置へとつなげることが可能です。
一見アナログな方法かもしれませんが、数値やデータだけでは伝わらない大切なツールとなっています。
メンテナンスに力を入れる理由

当院が予防処置と定期的なメンテナンスに特に力を入れているのには、確固たる理由があります。それは、前理事長の時代から受け継がれてきた「お口の健康を通じて、患者様の豊かな人生に貢献したい」という強い想いです。
私たちは、むし歯や歯周病になってしまった部分を治療で修復する「対症療法」だけを歯科医療の主軸とは考えていません。もちろん、痛みを取り除き、機能を回復させる治療は非常に重要です。しかし、それ以上に大切なのは、そもそもむし歯や歯周病にならないように、そして治療した歯が再発しないように、「病気の原因にアプローチし、健康な状態を維持する」ための根本的な治療、すなわち「予防治療」であると考えています。
一度削ってしまった歯や、失ってしまった歯周組織は、残念ながら完全に元通りになることはありません。だからこそ、ご自身の歯を一本でも多く、一日でも長く健康に保つために、予防がいかに重要であるかをお伝えし続けています。
地域のかかりつけ歯科医を目指して

「これからの時代は、内科や小児科にかかりつけの医師がいるように、歯科にも信頼できる『かかりつけ歯科医』という存在が必ず必要になる」。これは、当院の前理事長がしばしば口にしていた言葉です。その先見性は、まさに今日の歯科医療のあり方を示しており、私たちはその想いを胸に、地域にお住まいの皆様にとって、何でも相談できる身近な「ホームデンティスト」でありたいと願っています。
「ホームデンティスト」とは、ただ治療を行うだけでなく、患者様一人ひとりのお口の健康状態、生活習慣、価値観を理解し、生涯にわたってその健康を守り育んでいくパートナーのような存在です。
「痛くなってから」「困ってから」歯科医院を受診するのではなく、お口のトラブルが起こる前に定期的な検診やクリーニングを受けること。これが、ご自身の歯を長く健康に保つためには欠かせません。実際に、定期的な歯科受診をしている人とそうでない人を比較すると、将来的に歯を失うリスクに差が出ることが様々な研究で示されています。
私たちは、患者様ご自身がお口の健康に対する意識を高め、予防のために積極的に歯科医院に通うことのメリットを実感していただけるよう、様々な取り組みを行っています。

例えば、検査結果やお口の中の写真を一緒に見ながら分かりやすくご説明し、現状や変化をご自身の目で客観的に把握していただきます。
また、日々のセルフケアを効果的に続けられるアドバイスや、時には励ましの言葉をおかけすることも大切にしています。
「かかりつけ歯科医」として、患者様の人生に長く寄り添い、健康なご自分の歯を生涯にわたり使い続けること。それが私たちの目指す歯科医療の形です。
定期検診の重要性
定期的に歯科医院へ通うことは、お口の健康に対する意識を高め、むし歯や歯周病といったトラブルの早期発見・早期治療につながる大切な習慣です。
むし歯や歯周病などのトラブルを未然に防げる

定期検診では、むし歯や歯周病のチェックはもちろんのこと、ご自身では気づきにくい初期の小さな変化も見逃さず発見することができます。特に歯周病は、自覚症状がないまま静かに進行することが多いため、歯科医師や歯科衛生士による専門的なチェックが欠かせません。
当院では、必要に応じて位相差顕微鏡を用いた検査も行います。この検査では、お口の中に潜む細菌の種類や活動状態をリアルタイムで確認でき、むし歯や歯周病のリスクを把握することが可能です。
これらの情報を元に、一人ひとりに合わせた予防プランをご提案し、トラブルを未然に防ぐお手伝いをします。万が一、問題が見つかった場合でも、早期発見・早期対応ができれば、治療も簡単なもので済み、歯への負担も軽減できるでしょう。
歯と歯ぐきの健康を維持できる

毎日丁寧に歯磨きをしていても、歯ブラシの毛先が届きにくい場所には、どうしても磨き残しが生じてしまいます。
お口の中に潜むプラークは、およそ600種類もの細菌が存在すると言われています。そして残念ながら、毎日の歯磨きだけでは約6割程度しか落とせないというデータもあるのです。特に歯周ポケット、奥歯の溝などは、プラークが残りやすく、ご自身での完全な除去は難しいものです。
定期検診では、こうしたセルフケアでは落としきれない汚れを専用の器具やペーストを用いてクリーニングいたします。虫歯や歯周病の原因となる細菌の数を効果的に減らし、歯ぐきの炎症を抑える効果が期待できます。
全身の健康にもつながる

お口の健康は、全身の健康と深く結びついています。特に歯周病は、お口の中に潜む細菌や、それによって引き起こされる炎症が、血液などを介して全身に影響を及ぼし、様々な病気の発症リスクを高める要因となることが近年の多くの研究で明らかになってきました。
例えば、糖尿病・心筋梗塞・脳梗塞・誤嚥性肺炎・早産・低体重児出産などが歯周病との関連が指摘されている代表的な疾患です。
これらの全身疾患を予防するという観点からも、歯周病の予防と進行を抑えるコントロールが非常に重要になるのです。
歯科医院での予防処置
ご自身で行う毎日の丁寧なセルフケアは、お口の健康を守るための基本です。それに加えて歯科医院での予防処置を定期的に受けることが、虫歯や歯周病になりにくい口内環境を維持します。
なぜ歯科医院でのケアが重要か

毎日の歯磨きは非常に大切ですが、どんなに丁寧に磨いているつもりでも、歯ブラシの届きにくい場所や、ご自身では気づかない磨き残しがどうしても出てきてしまいます。また、一度硬くこびりついてしまった歯石は、歯ブラシでは取り除くことができません。
歯科医院でのケアでは、お口の中を隅々まできれいにし、セルフケアの限界を補うことで、むし歯や歯周病になりにくい環境を整えます。
また、定期的にプロの目でチェックを受けることで、万が一トラブルが起きていても初期の段階で発見できる可能性が高まります。
クリーニング

歯科医師や歯科衛生士が、専用の器具とフッ素入りの研磨ペーストなどを用いて、歯の表面に付着したプラークや着色汚れ(ステイン)を徹底的に除去する処置です。
歯の表面をツルツルに磨き上げることで、汚れが再付着しにくくなり、むし歯や歯周病の予防効果を高めます。
また、歯本来の自然な白さと輝きを取り戻す審美的な効果も期待できます。施術後は、お口の中がスッキリと爽快になるのを感じていただけるでしょう。
スケーリング(歯石取り)

歯の表面や歯周ポケットに付着した硬い歯石を、超音波スケーラーや手用スケーラーを使って除去する処置です。
歯石はプラークが石灰化したもので、表面がザラザラしているため、さらにプラークが付着しやすくなる悪循環を生み出します。
歯石そのものに強い毒性はありませんが、歯周病菌の格好の住処となるため、徹底的に除去することが歯周病予防の重要な処置となります。
ルートプレーニング(歯ぐきの中の清掃)

スケーリングだけでは除去できない、歯周ポケットの奥深く、歯根面に付着した歯石や歯周病菌に汚染されたセメント質をキュレットスケーラーを使って丁寧に取り除き、歯根面を滑らかに仕上げる処置です。
これにより、歯周病菌が再び付着するのを防ぎ、歯ぐきの炎症を改善し、歯周ポケットの深さを減少させる効果が期待されます。
フッ素の塗布

フッ素には、歯の表面から溶け出したミネラル成分を再び歯に取り込む「再石灰化」を促し、歯質を強化して酸に溶けにくい丈夫な歯にする効果があります。また、虫歯の原因となる細菌の活動を抑える働きもあります。
特に、生えたばかりの永久歯や、歯ぐきが下がって歯の根が露出している方、虫歯になりやすい傾向のある方などにおすすめしています。
歯磨き指導

歯ブラシの選び方、持ち方、動かし方はもちろん、歯間ブラシやデンタルフロス、タフトブラシといった補助清掃用具の適切な使い方についても、実践を交えながら丁寧に指導いたします。
正しいセルフケアの技術を習得し、毎日継続することが予防の基本であり、土台となります。
POICウォーター洗口

当院では、診療を始めるにあたり、まず「POICウォーター(ポイックウォーター)」という電解機能水でお口をすすいでいただくことからスタートしています。
POICウォーターは、高い除菌力を持ちながら人体には安全な成分でできており、お口の中の細菌を効果的に減少させることができます。これにより、治療中の感染のリスクを低減し、より衛生的な環境で処置を行うことを目指しています。
ポリリン酸ジェル

当院では、予防処置の一環として、またはご希望に応じて「オーラループ4⁺」というポリリン酸を含むジェルを使用することがあります。
このポリリン酸ジェルは、唾液中のカルシウムと反応することで歯の表面をコーティングし、フッ素のように歯質を強化する効果が期待される製品です。
また、組織の再生をサポートする働きもあり、お口の中の小さな傷や口内炎などに塗布すると、治癒を助ける効果が期待できる場合があります。これは、ポリリン酸が細胞内のエネルギー産生に関わるミトコンドリアの活動を活性化させ、組織の修復を促すためです。
天然由来の成分で作られているため、万が一少量飲み込んでしまっても身体への影響は少ないとされており、小さなお子様にも比較的使いやすい製品です。
当院では、クリーニングの仕上げや、ご自宅でのケア用として販売も行っておりますので、ご興味のある方はお気軽にお声がけください。
自宅での予防処置
お口の健康を維持するためには、ご自宅での毎日のセルフケアも欠かせません。
歯磨き

毎食後、就寝前の歯磨きは、予防の基本中の基本です。歯科医院で指導された正しい歯ブラシの持ち方、当て方、動かし方を意識し、一本一本の歯を丁寧に磨きましょう。
特に、歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目、奥歯の噛み合わせの溝などは、汚れが残りやすいので注意が必要です。
フロス・歯間ブラシ・洗口液

歯ブラシだけでは、歯と歯の間のプラークを取り除くことは困難です。実際に、歯ブラシのみの清掃では、お口全体の汚れの約6割程度しか落とせないというデータもあります。
デンタルフロスや歯間ブラシを併用し、歯ブラシの届かない部分の汚れもしっかりと除去することが大切です。また、補助的に薬用成分の入った洗口液を使用することも、口臭予防などに役立ちます。
ご自身の歯間の広さや歯ぐきの状態に合った清掃用具を選ぶことがポイントとなりますので、歯科医師や歯科衛生士にご相談ください。
食習慣の改善

むし歯や歯周病は、食習慣とも深く関わっています。例えば、甘いお菓子やジュース、パンや麺類といった炭水化物を摂取する頻度が高いと、お口の中が酸性に傾いている時間が長くなりがちです。この酸によって歯の表面のエナメル質が溶け出す「脱灰(だっかい)」という状態が長く続くと、むし歯のリスクが高まってしまいます。
また、時間を決めずに少量ずつ食べ続ける「だらだら食べ」や、常に何かを口にしている「ながら食べ」も、同様にお口の中を常に汚れた状態にし、虫歯菌や歯周病菌が活動しやすい環境を作り出してしまいます。
お口の中には、食事のたびに酸が作られますが、唾液の働きによって中和され、溶け出した歯の成分が修復される「再石灰化(さいせっかいか)」も行われています。しかし、食べる回数が多いと、この再石灰化が追いつかず、脱灰が進んでしまうのです。
当院では、患者様一人ひとりの食生活の状況やライフスタイルを丁寧にお伺いしながら、「このようなタイミングで間食をとるのはいかがですか」「この食品を召し上がった後は、特に早めの歯磨きを心がけると良いでしょう」といった、実践しやすいアドバイスも行っています。